全国印章業経営者協会(略称:JS会)は、2017年を振りかえって一番印象の深かった出来事を絵柄として彫刻したハンコ『歳の印』を製作し、そのお披露目をおこなう「捺印式」を12月4日(月)渋谷・ヨシモト∞ホールにて実施しました。
選挙でも大相撲でもなく「香香」が選ばれた理由
2017年の「歳の印」モチーフとして選ばれたのは、6月12日に上野動物園(東京都台東区)で誕生したジャイアントパンダ「香香(シャンシャン)」の母子です。上野動物園でのパンダ誕生は5年ぶりですが、不幸にもその赤ちゃんは生後7日で亡くなってしまったため、同園でパンダの赤ちゃんが一般公開されるのは1988年以来、29年ぶりだそうです。
2017年は、衆議院選挙がおこなわれ、芸能界や相撲界でも大きなニュースがありましたが、年の半ばに誕生してニュースとなって以降、半年間にわたって途切れることなく明るい話題となった「香香」を、私共は2017年の象徴的なモチーフと致しました。また、「香香」の誕生をきっかけに、その成長に伴って景気も上昇していると思われ、そういった明るくおめでたい気運が2018年に続いて欲しいという願いを込めて製作しました。
母子パンダの背景には、彼らの故郷である中国の竹林を描き、これからも母子が健やかに仲良く暮らしていくことを願いました。ハンコの4隅には四季の草花を配置(右上=桜、右下=朝顔、左下=銀杏、左上=椿)。1年間の時の流れを表現しました。
ハンコの四隅に彫られた花を、よーく見てください
彫刻されたハンコの大きさは36×36㎜のツゲ(黄楊)の印材で、製作には機械を一切使わず、デザインから彫刻まで全てハンコ職人が手書き、手彫りでおこないました。
もちろん、こんな小さなハンコに精細な絵柄を彫刻するのは、常人では不可能です。数あるハンコ職人の中でも、さらに熟練を積んだ「名工」と呼ばれるほどの職人でなければ出来ません。
もう一度、ハンコの写真をよーくご覧下さい。パンダの毛並みの1本1本や、背景の笹、椿の花心まで、髪の毛よりもさらに細い線まで、彫刻されているのがお分かり頂けるでしょう。また、赤1色の線画でありながら、丸い枠の内側にパンダが、その奥に竹林の背景が、と遠近感が感じられるように線の強弱を使って表現しています。
これほどの絵画的表現と、神業レベルのハンコ彫刻ができる職人さんとはどのような人でしょう……。
歳の印を彫ったハンコ職人、実は2人だった!
この、絵画的にも彫刻技術的にも優れた「歳の印」が実現したのは、実は2人のハンコ職人さんの腕前を合体させたからなのです。そのお2人とは、佐賀県武雄市で印章店(小林はんや)を営む小林修二さんと小林伸語さん。
「歳の印」のように、小さな印章に複雑な絵柄を彫刻するジャンルを「密刻(みっこく)」と呼びますが、これはハンコを彫刻する技術の中でも高度な技能と熟練が必要です。父である修二さんは、ハンコ職人が技を競い合う印章業界の競技会に出品し、密刻の部で何度も労働大臣賞(最高賞)を受賞。平成12年には、その卓越した技能が認められ「現代の名工」(卓越した技能者表彰)を、平成16年春には「黄綬褒章」を受章されています。息子の伸語さんも、技術競技会において文部科学大臣賞、経済産業大臣賞など受賞歴多数。平成15年にはテレビ番組の「テレビチャンピオン・全国ハンコ職人選手権」で優勝を果たしましたが、特に遠近感を用いた絵画表現と現代的なセンスをハンコに取り入れたデザイン力が高く 評価されています。
そこで今回の「歳の印」では、息子の伸語さんが印の判下(デザイン)を担当し、父の修二さんが彫刻を担当するという、親子鷹による初の共作をお願いし、絵画的にも彫刻技術的にも凄い作品が実現したのです。
※「歳の印」は全国印章業経営者協会の登録商標です。